〈社説〉保育の質の確保 厚労省の本気度を疑う
子どもの育つ権利を守るため、虐待の防止はもちろん、保育の質をどう確保し向上させるのか。国と自治体の政策にかかっている。
静岡県裾野市の私立保育園で起きた保育士による園児虐待事件は、氷山の一角ではないのか。各地で虐待や不適切な保育が相次いで発覚している。
富山市の認定こども園では、泣きやまない園児を倉庫に閉じ込めるなどの行為が繰り返されていた。仙台市の認可外保育所では園児に下着姿で食事をさせていた。熊本市の乳児院では職員が乳幼児に「顔面偏差値低い」「おデブだね」などの暴言を吐いた。
内部通報に園が速やかに対応できなかったり、自治体が公表を見送ったりしていた事例もある。裾野市の保育園では園側が職員に虐待を口外しないよう求めていた。
厚生労働省は都道府県などに対し、保育施設が虐待疑い事例を速やかに自治体に報告するよう通知した。虐待情報への対応について年内にも全国調査に乗り出す。
だが、厚労省が保育の質の確保にどこまで本気かは疑わしい。
都道府県や中核市は年に1回以上、保育所に足を運んで実地検査をするよう児童福祉法施行令で義務づけられている。厚労省は一定の条件下で、例外としてリモートや書面による監査への切り替えを認める施行令改正を本年度中に目指している。
実地検査の緩和は、コロナ禍や人員不足により実施が難しいとする自治体側からの提案を受けてのことという。実際、実施率が上がらず施行令違反の状態が続いている自治体も少なくない。
保育の質の確保には、外部の目が園内に入ることが重要だ。第三者評価は現在は努力義務にとどまる。実地検査は自治体職員が園を訪ねる貴重な機会になる。園の雰囲気や子どもの様子など、足を踏み入れて気づくことも多い。
保育園で虐待が頻発する今、実地検査を緩和すべきではない。子どもの安全を守るには、人員などを手厚くし、むしろ検査の強化を図る必要がある。
根本の問題として保育士不足の解消が急がれる。国は配置基準を引き上げて待遇を改善すべきだ。
現行の基準は1~2歳児6人につき保育士1人。4歳児以上だと30人につき1人だ。目配りさえ難しい状況で、保育の質に意識を向ける余裕が生まれるだろうか。
国としてろくに人もお金も充てず、現場で主に女性が低賃金と重労働に耐えて保育を担っている。この構造を変えていきたい。(長野毎日新聞デジタル版より)
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