マスクで表情が見えない…子どもの発達に影響? 「褒めても反応薄い。声かけてもポカン」保育現場から懸念の声
新型コロナウイルス感染拡大でマスク生活が始まり約3年。鹿児島県内の保育現場からは、成長に重要な乳幼児期に子どもが他者の表情を読み取る機会が減り、情緒の不安定や発達の遅れが生じるのではと懸念の声が上がる。「5類」引き下げに伴い、着用は個人の判断に委ねられることになる。子どもの発達とマスクの関係を取材した。
「褒めても反応が薄く、声をかけてもポカンとしている子どもが増えた」。鹿児島市の20代女性保育士は、マスクを着けるようになってから、園児と信頼関係を築きにくくなった。顔の大部分が隠れると、子どもは相手の感情を読み取りづらい。声も届きにくくなり、落ち着かない子が目立つようになったと明かす。
市内4カ所で認可保育園を運営する山鳩福祉会の外園紗都子理事長は「目だけで通じ合えるのは大人の世界」と話す。言語の遅れや、感情をうまく伝えられず体にかみつく子が増え、顔を見せる大切さを実感している。マスクを着けた保育士が食事をさせると、うまく物をかめない子も見受ける。外して口元の動きを見せると、まねして食べられるようになったという。
発達障害に詳しい鹿児島市小児科医会の大坪修介理事によると、子どもの発達には、表情を読み取る力が急速に育つ3歳までが特に重要になる。目、鼻、口を見て顔と認識し、笑ったり、会話をしたりすることで脳が刺激され、喜怒哀楽の表情を学ぶ。これは4~5歳で発達する「相手の気持ちを理解する能力」の土台となる。
大坪理事は「マスク生活が続き、顔を見て表情、感情を学習する経験が失われ、後天的に脳に発達障害が生じる可能性がある。外せる時は積極的に外し、周囲の大人や家庭がこれまで以上に表情を見せることを意識してほしい」と訴える。
鹿児島市のおおぞら保育園は、2020年夏以降、園内での着用をやめた。暑さで気分が悪くなる保育士が相次いだことや子どもが情緒不安定になったことを踏まえた。代わりに園児や保護者、職員の体調管理、感染防止対策を徹底。来客はインターホンで用件を確認してから迎え、必要最低限に抑えている。
藤村恵子園長は「マスクを否定しているのではなく、日々進む成長や今しか身につけられない力の弊害になる可能性も考え、総合的に判断した。園児の将来を第一に感染対策と保育の両立を模索していきたい」と話した。(南日本新聞より)
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