データから見た、福利厚生の必要性とは?
福利厚生と聞いて、思い浮かぶ制度はどのようなものでしょうか?
慶弔給付、財産形成、各種補助といった現金での給付が一般的だった事業者による福利厚生施策。近年では、ワークライフバランス支援、自己啓発など、多様化が進行しています。
本コラムは、独立行政法人労働政策研究・研修機構による、【企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―】を基に作成しています。
URL:https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/203.pdf
福利厚生施策とは?
福利厚生とは、「給与や賞与とは別に、事業者(企業)が従業員とその家族に提供する健康や生活へのサービス」 と定義されることが一般的です。
福利厚生は、大きく分けて、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つに分けられます。「法定福利厚生」とは、健康保険や厚生年金保険 等法令によって事業者に義務付けられているものをいい、「法定外福利厚生」は、「法定福利厚生」以外の事業者が自発的に行うものをいいます。
「法定福利厚生」は法令で定められたものである為、一般的に「福利厚生」というと、「法定外福利厚生」をイメージする方が多いと思います。
「法定福利厚生」も「法定外福利厚生」もその費用について、税務上損金算入が認められていますが、「法定外福利厚生」を損金算入する場合には、一定の要件を満たす必要があります。
要件1:全ての従業員が利用できる(機会の平等性)
例えば、従業員全員が1カ所の事業所に勤務する場合の食堂費用の補助は、全ての従業員に等しく機会が与えられていると言えます。
一方で、複数の(かつ遠方の)事業所に分かれて勤務する場合で、特定の事業所にのみ食堂を設置し、食堂費用を補助した場合は、食堂の無い事業者で勤務する従業員には、福利厚生を受ける機会が与えられていない為、等しく機会が与えられているとは言えません。
全ての従業員に均等に機会が与えられていない福利厚生制度は、費用処理が認められない可能性があります。
要件2:サービスとして金額が常識の範囲内であること(金額の妥当性)
妥当かどうかの判断は国税局から指針が示されています。例えば、慶弔見舞金であれば、10,000円から30,000円程度、交通費であれば、距離に応じた金額上限 等 が示されています。
要件3:現金(換金性の高いもの)支給でないこと
賞金、旅行券や金券といった現金や換金性が高いものは、福利厚生費用ではなく、給与として取扱われます。給与として損金算入はされますが、福利厚生費用ではない為、源泉所得税の徴収の対象となります。
要件についての詳細は国税庁のホームページで事例が紹介されています。
国税庁HP:
交際費等と福利厚生費との区分
給与所得となるもの
福利厚生施策の実態
【企業における福利厚生施策の実態に関する調査―企業/従業員アンケート調査結果―】では、企業における福利厚生制度・施策の現状や従業員のニーズを探るため、事業者(企業)と従業員の双方にアンケート調査を実施しています。
福利厚生制度・施策について「施策の有無」の設問では、「ある」の割合が最も高かった制度は「慶弔休暇制度」(87%)となっており、従業員の規模別で見ても、大きな差はなく、ほとんどの事業者で実施されている制度・施策となっています。
一方で、上図の通り、従業員が30人未満の事業者と300人以上の事業者間で差が大きい項目は、財形貯蓄制度、メンタルヘルス相談、永年勤続表彰、世帯用住宅・寮の整備、家賃補助や住宅手当の支給、保養・レクリエーション施設等の提供・利用補助、短時間勤務の7項目となっています。
財形貯蓄制度、寮の整備、保養施設・レクリエーション施設 等は対象となる従業員の人数が多くないと成り立たない制度ですし、短時間勤務 等も少ない従業員で事業を運営していると、導入しにくい制度です。家賃補助、住宅手当 等は、事業者にとっての経済的な負担が大きいことが導入に至っていない理由と思われます。
分類で見ると、休暇制度に関する項目では、従業員規模による差が小さく、健康管理、自己啓発、住宅、働き方に関する項目では、全体的に差が大きい傾向があります。
これは、従業員規模が大きい事業者では、長期間の雇用を前提として、社内での人材育成を念頭に置いている事業者が多い一方で、従業員規模が小さい事業者では、一般的に、若年者が多く、離職率も高い為、健康管理、自己啓発までをカバーしきれていないケースが想定されます。
住宅や働き方に関する項目も、単に費用負担金額が大きいという問題に加えて、転勤を前提としていないや、長期的なライフプランに沿った働き方を前提としていない といったハードルがありそうです。
従業員は何を望んでいるのか?
従業員に特に必要性が高いと思う制度・施策についての設問では、「人間ドック受診の補助」に次いで、「慶弔休暇制度」、「家賃補助や住宅手当の支給」、「病気”休暇”制度」、「病気”休職”制度」などがあがっています。「福利厚生」と聞いて、一般的に思いつく項目が挙げられており、従業員は”オーソドックスな福利厚生”を望んでいる傾向が見えます。
福利厚生施策の有無が与える影響
現在の勤め先を選ぶ時に、福利厚生制度の内容を重視したかという設問では、全体では、「非常に重視した」と「ある程度重視した」と回答した人(重視グループ)の合計が35.7%、「ほとんど考慮しなかった」と「全く考慮しなかった」と回答した人(考慮しないグループ)の合計が63.8%となっており、一見すると、職場選びの際に福利厚生は重視されていない様に見えます。
しかし、年齢毎にデータを分解してみると、30歳代と40歳代を境にはっきりと、重視グループと考慮しないグループが逆転していることが分かります。
40歳代以上の中年世代と、30歳代以下の若年世代では、勤め先に対する福利厚生への期待値に差があります。
新卒時代から、求人募集をする時に、インターネットのまとめサイト 等で、事業者(企業)の評価や働きやすさ等を検索するカルチャーの境目と合致しているように思います。若年世代では、[事業者名 福利厚生]などの検索ワードで表示されるあらゆる情報を得ようとするカルチャーがあると言えるでしょう。
手軽に始められるパッケージ型福利厚生
従業員規模が小さい事業者の中には、福利厚生の重要性は認識しているが、運用できる人材がいない、何から始めればいいか分からないという事業者も多くいるようです。
そんな事業者におススメなのが、月額制で始められる、パッケージ型の福利厚生サービスです。少額の初期費用と、月額×従業員数というシンプルな料金形態で手軽に始められることが利点として挙げられます。
また、大企業でも採用されているサービスも多く、サービス提供会社のホームページを見れば、誰もが知っている会社の事例紹介があるサービスも多くあります。
上記の通り、特に30歳代以下の世代に求人訴求したい事業者様は、是非ご検討下さい。
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