職員の質こそが法人の質や価値になる ~世田谷区内の近隣保育園による合同の取組~
(社会福祉法人 東京都社会福祉協議会 発行 「法人協」 2019年11月号の掲載記事 より)
世田谷区にある社会福祉法人つながりの会 桜すくすく保育園では、昨年度、近隣4園と合同で「人間力向上研修」を全6回のコースで実施しました。良い保育をしていくためには、正しい知識や技術が大切ですが、それを継続していくためには、「福祉の心とコミュニケーション」(=人間力)がとても大切です。そこで、「優しい心」と「他人を思いやる心」を相手にわかりやすく伝えるスキルを身に着け、福祉サービスの質を上げるという目的で開催されました。
「3年ぐらい前から人材紹介会社を使わなくては職員の確保が難しくなってきて…さまざまな研修を受ける中で、人材採用に費用をたくさん掛けてもつぶれてしまう社会福祉法人もあると聞きました。さらに、採用に費用を掛けるのではなくて、定着に費用を掛けて行ったほうが良いのではないかというお話も聞き、本当にそうだなと思って。『キャリアパスを活かした人事管理と育成制度』という研修も受け、いろいろな懸念材料もあったのですが、キャリアパス構築も視野にいれて進んでいこうということになりました。」理事長の秋元智子さんはそう話します。
「魅力ある職場づくり」を行っていくことは、単に採用・定着の促進を目的とするだけではなく、所属価値の向上から、法人価値の向上をも実現するということです。職員の質こそが法人の質や価値になるという思いで、「魅力ある職場づくり」に関する研修等は、理事会承認を経て予算化され実施の運びとなりました。
研修には、桜すくすく保育園の他、もともとつながりがあった他法人の認可保育園(45名定員)と、その他2つの認可外の保育室*(2021年に統合し、つながりの会の傘下で定員101名の認可保育園に移行予定)が参加。グループワークでの話し合いと、ワークシートでの振り返りを行い、次回以降につなげていくことを続けました。
秋元理事長は、「研修を実施して良かったという意見が多く、他の園の職員ともコミュニケーションを取りやすくなったように思います。研修で学んだことが何かひとつでも心に残り、例えば、靴を揃えたり、落ちているゴミを拾ったりするだけでもいいのですが、そういう一つひとつを大事にしていくことが保育につながっていくのかなと感じています。そこの人間性の部分を大切にしたいと思っています」と言います。
現在は、人を育てる「キャリアアップの仕組みづくり」もしており、職務と処遇を明確化し、頑張った人がきちんと報われるような体制を目指しています。
その中で、研修を一緒に行った他法人の保育園とともに、園のリーダー層が各保育園で求める風土づくり・モデル行動づくりも行っています。「どんな保育士になって欲しいのかという求める保育士像を、例えば、目を見てしっかり挨拶できる人とか、何か色んな発想ができる人とか、アイディアを出せる人とか、事細かに考えています。もちろん、園によってそれぞれ求める人物像は違う、とは思いますが。年度内にまとめて、テスト期間を経て、実際に使っていけるようになればと思っています。」(秋元理事長)
その他にも、結婚や出産、子育て等、職員の状況からワークライフバランスを考え、土曜日出勤がなかったり、シフト時間勤務がないといった働き方の選択肢を増やし、職員の定着につなげる仕組みも実施しています。人材の確保・育成・定着を意識した、法人における、そして他法人・他園との合同での取組みは、これからも続きます。